「自分でやった方が早い病」の治し方 その4

自信のあるビジネスマン

外部から人を採用したからといって全てが解決する訳ではありません。むしろ、優秀といわれる人材ほど、仮に成果が出なかった場合、自分の立場を守るために成果が出せない理由として、職場環境のせい、経営のせい、人材のせい(メンバーが悪い)と言うケースもあります。社長のミギウデになって欲しくて採用したにもかかわらず、こうなってしまうと、せっかく採用した優秀な人材が、社長の敵になってしまう場合もあります。そうならないためには、経営マインドをもった人材を選ばないといけません。私は、自分自身がかつて、社長の“ミギウデ”のような立場で仕事をしていたこともあるので、この点については熟知していました。つまり自分がどの立場で活躍を期待されているのか?を理解できる人材でないと上手くいかないということです。社長の側なの?社員の代表なの?どの立場なの?ということです。(正社員でのミギウデ採用は、どこの会社も本当に難しいと感じていると思います)

そうして選んだ東京から来た人材には、主に法人営業(チームのスポンサーをとってきてもらう仕事)の分野を見てもらいました。日々の業務は私に報告をしてもらい、私は指示をするだけ。私が指示をしたことは、早ければその日のうちに報告を受けるという方法をとりました。結果として、私は法人営業の分野をそれほど詳細まで見なくても良くなりました。その分、他のことに時間を使えるようになりました。空いた時間で、他の部署の仕事に入ったり、また社員の相談やフォローにも今まで以上に時間を使えるようになりました。

ここで重要な点は、外部からきた人材がいきなり成果を叩き出す(もちろん大いに期待はしていますが)ということよりも、社長である私に、時間的、精神的な余裕が生まれることを期待していたという点です。もちろん、業務を任せたことで、売上が下がってしまったり、経営状況が悪くなってしまってはいけませんが、しばらくの間は、大きなマイナスもなく、また、その成長スピードが少しだけ鈍化しても、それは将来、私が全てを抱えている今のままでは到達できない、高い目標に到達するための必要な準備時間であると認識することが大切でした。当然に、採用にあたり多少の組織内のハレーションもありましたが、それも成長痛として淡々と処理していくことも必要でした。

ミギウデ人材の投入により私に少し時間が出来たことで、私は社内で属人化している業務の棚卸しに注力をしました。正直なことを言えば、当時の私は、この業務の棚卸し、業務フローの仕組み化ということでも、多部署にわたり、いっぺんにいろいろと手を出しすぎてしまい、整理できていたのか?と言われれば怪しいところなのですが、属人化していた業務フローを仕組み化しようとする動きに私自身が時間を使え始めたことはとても大きかったです。

社内業務の属人化をなくす目的のひとつに、社内に主体性という空気を取り入れるということもありました。業務フローを整備することと同時に、主体性をとりいれるために、まず最初に、社内での情報共有を促進することに時間を使いました。情報共有が促進されれば、部署内から、また部署をまたいでも、意見や議論が主体的に出てくることを期待しての施策でした。一般的に、情報共有の少ない会社の場合、以下のような実態があることは私の過去の経験から理解していました。

・業務連絡の手段に電話が多い。(それも個人の携帯電話を多用している)
・メールに社内CCを入れる習慣がない。
・社外との連絡に私用Lineを多用する。
・SFAやCRM、名刺管理ツールなどの情報管理ツールが導入されていない。
・経理(特に売掛請求や買掛支払い)が決められた承認フロー以外に抜け道が多い。

全部ではありませんが、当時に私の周囲には、まあまあ上記のような実態がありましたので、まずはそこから改めていきました。こうしたことに時間を使えるようになったのも、外部からミギウデを入れたことで生まれた余裕からでした。

会社の中では、そもそも情報共有の必要性を理解していない(教えらていない、その効果を実感していない)人が大半でしたので、積極的な情報共有は行われていませんでした。自分の与えられた業務は自分の範囲で完了できれば良い。前任者(または過去の自分)と同じアウトプットを出せば、何も問題はない(文句は言われない)という前提があったようにも(私には)感じられていました。その結果、あまり周囲の人と関わることなく、各自が黙々と自分の仕事をこなしているような状況でした。上長の承認や周囲への共有や相談もなく、以前と同じなので・・ということで進められている業務も多かったです。
これが社風というか、会社の文化(空気)だったのです。こうした職場の空気の中、一方的に『情報共有をもっとしましょう!』大きな声で号令をかけても、なかなか根付くものではありません。そこで私は、社内の業務ルールを沢山つくりました。

社外とのやりとりは、なるべくメールにさせて、必ずグループメールをCC に入れさせたり、社内チャットツールのSlackの使い方(これには積極的にうるさく言ってくれる人がいたので助かりました)や、個人Lineでの業務連絡はなるべく禁止、社内会議の設定や参加義務、時間厳守のルールなどを設定していきました。なかなか一旦根付いているものを変えていくには時間がかかるものですが、まずは自分から積極的に実行することで、その私の行動に追随してくる社員のやり方を褒めて大切にするようにしました。

ミギウデ人材を入れて良かったことは他にもあります。社内の日常会話や、現場の細かいことを私に報告してくれる“耳”が出来たことも大きかったです。
文鎮型なフラットな組織になっていたため、私に報告が集中する状況ではありましたが、当然に、報告するべきことは個人で選択されていました。トラブルが起こった場合には悪い報告も上がってきますが、表面化していないトラブルについては、積極的に悪い話を私に報告してくる人はいまぜんでした。また、社内の人間関係や日頃想っていることなど、言わなくても良い、たわいもない話は、社長である私には届きませんでした。
そうした情報が、私の“ミギウデ”として仕事をしてくれている人材が、吸い上げてくれて私に報告をしてくれていました。これは、その後、様々な判断をするうえで私にとっては大きなことでした。私には良く見えていることも、実は、裏側ではそうでもないこと等を把握することができました。どんなにフラットに接していようが、社員にとっては社長は社長です。絶対の権力者であることに変わりはなく、何もかも全てを社長に打ち明ける人は当然にいません。

また多くの中小企業の社員にとって、業務上の“意見”や“議論”は、職場の人間関係に対立を生み出すものであって、協働や改善の源であるとは受け止められていません。良い面もありますが、多くの中小企業の社員は、仕事と自分、職場の人間関係と個人的な人間関係を【混同】してしまいがちです。だから表面的には、職場がギスギスしないというメリット(社長はここに騙される)もありますが、情報の共有や、共有された情報に対して、周囲が意見したり、質問したり、ということにはなりにくいということがあります。そして、悪循環ですが、意見もないし、質問もなければ、そもそも共有する意味すらないと考えてしまうという構造もあります。結果として、仕事が属人化していき、周囲は不満を更に溜め込んでしまうという悪循環です。
大きな会社であれば、人も沢山いますし、意見もそもそもバラバラなので、そんなことにはならないのですが、20名程度の会社であれば、誰かに嫌われたら終わりです。誰かと意見が違って、その結果、険悪な人間関係(話さないとか、無視されるとか)になってしまえば、そんな職場に毎日通いたいと思う人はいません。結果として、思うことがあっても絶対に本人の前では言わないという選択を取ってしまいます。この状況は文字とおり、私の新潟での職場にはありました。
そうした表に出てこない声、会議では絶対に本人を前にしては言わない内容を、ミギウデ人材が聞く“耳”になってくれました。私は、ミギウデから上がってくる意見を聞いたうえで、ハレーションを起こさないように、また意見を出してくれた人を対立構造に置くようなことは絶対にせずに、上手に、現場の意見を活かして社内ルールを整えていきました。

会社はすぐには良くはなりませんが、東京からミギウデ人材を入れて社内に業務フローやルールを整えていったおかげで、徐々に、社内からの発言も出てきました。意見は対立を生むという考えは消えたりはしませんが、それでも、ほんの少しずつ変わり始めていきました。以前は、会議で発言をもとめても、シーーンとしていたのに、少しずつ会議での会話も増えていきました。もちろん、最初は中庸な当たり障りのない意見が多かったです。それでも、意見が出てくるということは、良くしたいという思いからなので、その意見も歓迎して私は聞いていました。

更に良かったことは、少しずつ属人化していた業務に社内ルールが入り、ちょっとだけオープンになったことで、社員の適性というか、できる、できない、が徐々に浮き彫りにもなってきました。それまで属人化していて、ちょっとブラックボックスで、個別に淡々と仕事をしていた個人の集合体であった組織の状態から、少しずつ、業務がオープンになってくると、社員の得意不得意が見え始めてきたのです。説明をすれば、「出来ていない」というアウトプットも、

・時間がないから出来なかったのか?
・そもそもやる気がなかったのか?
・知識やスキルがなかったのか?
・不得意なのか?

いくつかの理由が考えられますが、その中でも、不得意なケースというのわかり始めてきました。
そして、知識やスキルがない場合、教える人がいるのか、いないのか?もわかってきましたし、不得意な場合、限られた時間(締め切りまでの時間)の中で望むレベルにまでは出来ないということもわかってきました。
でも、なかなか本人は「不得意です」とは言ってきません。頑張ろうとしてくれますし、現に頑張ってくれていました。でも、そこは経営が判断してあげないと会社は成長しません。

つまり、不得意な業務があって、そこに教育担当がつけない場合には、そこも外部人材で手当して、業務フローを整備してあげる必要があります。違った言い方をすれば、メンバーの得意を理解してあげて、そこを伸ばす環境を整えてあげないと、会社は良くなりません。適材適所の基本です。そこで、私は、明らかに会社全体でスキルが不足している業務には、オンライン副業の専門家スタッフをいれる決断をしました。こうすることで、業務フローの整備をもう一歩進めようと考えたのです。

本日のコラムはここまでです。
次回は、外部から副業人材を入れたら、会社がどうなったか?を書いてみたいと思います。