苦手なことは、誰かに任せたほうが良い。
社長である私の“ミギウデ”人材を外部から登用し、会社内の情報整理、現場での改善を進めていくのと同時に、現場スタッフの得意、不得意を把握しながら、苦手あるいは専門的なスキルが社内にないと思われる職務については、オンライン副業のスタッフを起用しました。具体的には、デザイナーとSNSの運用スタッフを起用してみました。従来は、画像をちょこっと加工するのも、SNSの投稿をするのも社内スタッフが担当していましたが、当然に、未経験からの仕事でキチンと基礎から教えてもらえる環境でもないので、結果として、過去の実例を見よう見真似で、個人のセンスに委ねられてしまっていました。任されている本人も、これで良いのかな?と不安を感じつつ、自分のもっている知識と過去事例でなんとか対応しているといった状況でした。
ちなみに、話は少し横道に入ってしまいますが、私は、業務のセンスとは、経験の積み重ねだと思っています。つまり持って生まれた才能ではなく、経験によって積み上げられた技術だと捉えています。教えられてすぐにできる人や、教えられなくてもできる人は持って生まれた才能の持ち主ですが、通常の業務において、人ができることは、誰にでもできることであり、その再現は、経験の積み重ねによる技術によって誰にでも実行可能であると考えています。
つまり、経験のない人に、頑張れ!という昭和的なアプローチは、私は正しいことではないと思いつつ、また、「やりながら考えよう!」という育成方法も、それは丸投げと考えていました。何を当たり前のことを・・・と思われている方もいると思いますが、20名程度の会社で未経験者を採用すると、こうしたことが発生することがあります。少なくても、私が社長をしていた新潟の会社は、私自身の未熟さから、そうなってしまっていました。私の考えとは裏腹に、OJTといえば聞こえは良いですが、即現場に入ってもらうみたいなことを私自身も許容してしまっていました。教育する余裕がなかったのです。言い訳にもなりますが、社長業とは自分が思っているとおりにもならず、キレイゴトではいかないものです。
私も、このままではマズイと思い、社内スタッフが苦手と思われる職域には、外部から副業スタッフを投入し、社内スタッフには、得意なところを担当してもらうようにしました。社内スタッフにとっては、自分の得意なことに時間をつかえるようになったので、自分の仕事に、もっとこうしたい、こうしたら良いのでは?というアイデアが生まれるようになりました。人は、得意なことにはどんどんアイデアが出てきますし、前向きにもなれます。結果として、ちょっとずつですが主体性が表現されるという効果もありました。
また、外部のスタッフと一緒に業務を遂行することで、苦手だったことに時間を使わなくて良くなったので、今までより速いスピードでアウトプットが出せるようになってきました。しかし、そう全てが上手くいくわけでもありません。生産性が上がってきた一方で、ディレクションスキルには課題が出てきました。オンラインでコミュニケーションをとる外部スタッフには、正しい指示の出し方、正しい納期の設定を行ってあげないと、外部スタッフからの生産性は上がってきません。言い換えれば、ちゃんと指示してあげないと、外部スタッフは動きようがないのです。外部スタッフが十分に動いてくれないと、費用も無駄になります。私の場合には、このあたりもミギウデ人材が、外部への指示の出し方、外部スタッフの管理の仕方などを現場に落し込んでくれていました。
外部のプロ人材を起用する場合、指示出しする側がキチンとしていないと、外部スタッフへの費用が無駄になるケースはあると私は思っています。つまり社内のスタッフからの指示出し、外部スタッフのアウトプットのクオリティコントロールまでを業務フロートとして仕組みの中に落し込んでおく必要があります。
20名程度の会社でそんなことができるとしたら、社長くらいではないでしょうか?当時の私もそうだったと思います。ですので、私の場合には、そこもミギウデ人材がカバーしてくれていたので、
1.社内の苦手領域を見つける
↓
2.苦手をカバーしてくれる外部スタッフを起用する
↓
3.外部スタッフへのディレクション(指示出し)を仕組み化する
↓
4.業務フロー自体が仕組み化する
↓
5.適材適所、得意分野で社内の主体性が増す
という好循環が周り始めることができたと思います。
こうしたこと以外にも、外部スタッフを起用したことで、社内には、いろいろと気づきもあったようです。仕事の進め方、依頼の仕方、そのための準備、言った、言わないではなく、伝わったかどうかが大切、みたいな当たり前のことが、外部スタッフから社内スタッフが学んでいってくれました。こうしたことは、社長がガミガミ言うよりも、仕事を通じて、社外の人から間接的に教えてもらうことも、人材の成長には役立つということもありました。業務フローを仕組み化するうえで、適材適所を実現するうえでは、外部スタッフの起用は効果的だったと思います。でも指示の出し方まで仕組み化しておかないと、回らないケースもあると感じています。
会社の方針が見えないとか言われる
ちょっと話題を変えてみます。会社のミッション(理念)とかビジョン(目的、目標)についても書いてみたいと思います。
社長なりに未来の方向性とかビジョンなどは考えているし、社内にも伝えているけれど、まったく会社が変化しないので、社員からは会社の方針が見えないと言われる、なんてことはありませんか?経営者としては腹がたちますよね。幸い、私の場合、新潟ではこのようなことはありませんでしたが、過去には私も似たような経験はありました。こうした状態を放置しておくと、組織のモチベーションが下がり、負のスパイラルが加速するということが起こってしまいます。
私も会社にはミッション(理念)やビジョンは大切だと思います。最終的にはそれが最も必要なことだと痛感もしています。重要なことは間違いありません。 でもそれは、理念がわかる、理念にフォーカスして、自分で自分の行動を判断できる人材が現場にいる場合に効果がでると思います。つまり、私の考えでは、社長が「自分でやった方が早い病」に罹っている場合で、組織に主体性がないといったケースでは、その組織変革の第一歩は、理念の徹底からではない。それは最初の改善策ではない。と私は思っています。
ではなぜ、理念や社長の掛け声だけでは組織が変わらないのか?
その理由は、そもそも、そこに“打てば響く人材”がいないからだと思います。打てば響く人材がいるか、いないか、
これは本当に大きな違いなのです。
また、経営者が理念を伝えても、いっこうに売上があがらない場合もあります。経営者が理念を語ることは良いことだと思いますが、理念だけでは、組織は育たないと私は思っています。つまり理念は仕事を教えてくれないし、理念だけでは社員のお給料も上がらないから、誰も行動を変えようとはしないと思います。
言い方を変えれば、やり方がわからないのに、大きな目的や未来を語られてもついていけない・・・という状態だと思います。これは、会社勤めで、仕える側だった私の経験にもあります。言っていることはわかるけれど、で、どうするの?というか、私は何をしたら良いの?状態です。
では、どうした良いのでしょう?
私は、社内のレベルにあわせて理念を前提に人材を教育してあげることが最も重要だと思います。理念を理解して、現場の仕事を指揮、指導できる人材がいて始めて、理念と現場の仕事が両輪として回り始めると思います。
社長がこれを自らできれば一番良いですが、このコラムでは、社長が「自分でやった方が早い病」に罹っている場合ですから、この場合には、ミギウデがいないとなかなか厳しいというのが実態ではないでしょうか? 私が知る限り、理念の伝達を積極的にしながら、現場に業務を落し込んでいける社長を見たことはありません。私の経験では、どちからに長けていて、どちらかが手薄になる、それが人間ですし、一般的な社長ではないでしょうか?
少なくても、私の新潟時代はまったく両方ともに出来ていませんでした。
「自分でやった方が早い病」の治し方 その5
