「自分でやった方が早い病」の治し方 その6

ミギウデ人材の集まり

私は、完全に重度の「自分がやった方は早い病」に罹っていたダメ社長でした。しかし、これは、営業マインドがあって、責任感の強い社長さんが、患いがちな症状(問題)なのです。私も、当時は、自分でなんとかしよう!と必死でした。会社の売上が上がれば、状況は良くなる、会社の空気も変わるはず、と思っていましたし、その最前線にたっている自覚と責任を強く思っている社長という立場では、「まずは自分が頑張ることで、なんとなしてやる!」と思ってしまうものです。
でも、それが間違いの素だということに、渦中にいるときは気が付きにくいのです。少なくても私はそうでした。なんなら、自分が人の倍働いたら良いじゃん!くらいに思ってました。
でも、実際に人より長い時間働き続けると、体に疲れも溜まってきます。そうなると。。。本当は自分がすべての原因なのに、誰もいない自分だけが残っている夜のオフィスで、ふと、「なんで社員のみんなはもっと働かないのだろうか?」=(もっと働いてよ!)と思い始めてしまいます。人に矢印が向き始めてしまいます。こうなるともう完全にダメです。社長失格です。大切な社員に対して、「やる気あるのかな?」とか「もっと学ばなくて良いのかな?」とか悪いことばかりが頭に浮かんできてしまいます。客観的には、自分で巻き取って、自分が忙しくなって、自分から教えてあげる時間も失くしていったくせに、組織のリーダーである社長が、勝手な主観で自分の会社の社員を信じられなくなり、その原因を社員のせいにしてしまっている状態となってしまいます。こうなると、こんな社長に誰もついていきたくなくなります。言わなくても、社員はわかります。「あー信頼されていないんだなぁ。。。」って、それは雰囲気で伝わります。組織崩壊です。
私の場合、(たぶん)そこまではいかなかったと思いますが、その1歩手前くらいまではいっていたと今では思います。

では、どうしたらこの状態から抜け出せるのでしょうか? 私の場合は、私自身がまず変わるということはできませんでした。なぜならば、このコラムで何度も述べているように、自分が立ち止まる余裕すらもなくなっていたからです。売上を伸ばさなくてはいけない、財務状況を改善しなくてはいけない、資金繰りを安定させなくてはいけない、毎日毎日、本当に毎日毎日、今、この私がやらなくてはいけないことに押しつぶされていました。その仕事をこなす中、社員からは「これ、どうします?」という判断を常に求められる。こうした状況の中、私は、私自身が、まず率先して変わるということはできませんでした。私には、既に高速で走っている列車を止めることも、コースを変えることも出来ませんでした。

結果として、私は、外部から人を入れました。私の立場で現場と目線を合わせて、私の代わりに現場に指示を出したり、判断してくれる人を入れました。私は、私が変わるために、時間的な余裕が欲しかったのです。私に押し寄せてくるタスクを巻き取ってくれる人が欲しかったのです。そうすることで、時間的にも、精神的にも、余裕が欲しかったのです。社員のポテンシャルを信じて、彼らを適材適所に配置し直してあげる時間が欲しかったのです。誰にでも得意なことはあります。上手くいかない会社の場合(私の場合)、タスクに人をあてはめてしまいます。そして出来ないことは、「習うより慣れろ!」と乱暴に言ってしまいます。本当は逆です。人の得意にあわせてタスクをはめていくことが大切です。そのためには社員の得意を見抜いてあげる必要があります。それこそが、小さい会社の社長の仕事です。その中から管理職を養成していくことが会社を大きくしていく方法です。

私は外から人を入れたことで、これができるようになりました。もちろん、すぐに完璧になどなりません。ちょっとづつ、ちょっとづつ、目に見えないくらいの程度でちょっとづつ出来るようになっていたレベルです。でも、変化できる状況になったことが大きかったです。余裕が少し生まれたことで、いろいろと変えていくことができるようになりました。

以下は全部同時に全社員に向けて実施していったというよりは、時間をかけて順番に、人によって、伝え方もやり方も変えながら、実施していったことです。

・アイドリング時間(ヒマな時間)がうまれないように、キチンと個人の業務スピードを意識して40 時間/週 分のタスクを与える
・業務管理(経費精算とか日報作成とか)に週の25%の時間がかかると設定して、残り75% を実務時間としてタスク設定して仕事をふる、管理する
・最初はちょっと余裕もって予定工数の時間設定をする。その後、ちょっとづつタスクを足してみる。
・やり方の見本をみせる
・テンプレートや仕上がりサンプルを渡す
・良くできた仕事を社内共有する
・週次で設定した規定時間内で、やったか?やっていないか?を聞いてみる
(出来たか、出来ないかではなくて、やったか、やっていないかを聞く)
・やらなかった理由、できなかった理由をきく。聞いたうえで、出来る方法をサポートする
・相談があればキチンと聞いてあげる。回答は理念や会社の方針にそって回答する
・やってほしくないこと、やってほしいこと、この仕事の仕上がりイメージ、ゴールイメージ、成功の状態を伝える。
・明確な期限をきる。締め切りを日時で決めておく。できるだけ早くとか、来週の早めにとか言わない
・必要に応じて予算を与える。または与えない(兵糧攻め)
・小さいプロジェクトをつくってリーダーを指名する

こんなことを少しづつ、少しづつ、実践していきました。相手によっても理解度も違いますし、受け入れ方も違います。でも、それは相手を攻めるのではなく、こちらからの伝え方を変えていくということを意識していきました。もっと言えば、全部理解してもらえるというこは最初から、いい意味で諦めながら臨みました。人の価値観はみんな違います。働く目的も様々です。でも、伝えるのが社長の仕事だと言い聞かせ、タイミングをみて、人にあわせて、話し方を変え、伝える努力を続けました。

当たり前のことなのですが、こうしたことを社長から指示、発信できるようになると、会社も良くなり、社長の「自分でやった方が早い病」も徐々に良くなっていきます。私の場合、会社の売上も社長1年目 約5億円、2年目 約7億円 3年目 約8億円と上向けていくことができました。新潟に単身赴任したときに与えられたミッションであった3 年目に売上12 億円という目標には到達はしませんでしたが、社員数を大幅に増やすことなく、人件費も販管費もほぼ変えずに、売上を伸ばせたのはこうした改善の成果だったと思いますし、途中から外部からミギウデを入れたから、私も変われたと思っています。

まとめ

うまく行ったことは少なく、失敗したことの方が多かったというのが、私の新潟での会社経営でした。私の「自分でやった方が早い病」も完治した訳ではありません。レベル4だったステージが1つか2つ、下がった程度です。それでも外から私と話が通じるミギウデ人材を投入して、少しずつ会社と自分自身を俯瞰して見ることができる時間が取れたことで、会社を変化させることができました。

私は、3 年半の新潟での経験を通じて、社員20 人くらいまでの会社の社長は、多かれ少なから、「自分でやった方が早い病」になってしまうのではないかと考えるようになりました。なぜならば、中小企業では社長が最も優秀で、社員は、社長の指示を待つタイプが多くなるからです。100 人とか200 人規模の会社、毎年、優秀な新入社員を採用している会社などでは、モチベーションの高い、打てば響く人材もいると思うので、任せろ、失敗させろ、経験から学べということが通用するとは思いますが、一般的に言って、数名から20 人程度の規模の中小企業では、その人材育成方法は難しいのだろうと思っています。結果として、社長のキャパシティ=会社売上となり、社長は多忙で、結果、売上が伸び悩むということが起こっていると思うようになりました。

経営と現場のわかるミギウデ人材が、社長の気持ちもわかって、社長の業務の一部を巻き取ってくれたら、その分、社長に時間の余裕が生まれ、会社をもっと良くすることができる、社長やエースに属人化している社内ブラックボックスを開けることができる、人が育つ、会社が良くなるということが起こるのだと思います。

私もそうだったように、中小企業の社長には、自分が現場から離れたら、会社が回らなくなるという不安は必ずあると思います。その不安を理解して、社内で業務を巻き取ってくれる人材がいないことには、会社は良くならないというのが私の経験談です。

ここまで長文を読んでいただき、ありがとうございました。もしかして、あなたも「自分でやった方が早い病」を患っていませんか?もし、この病を治したいと思っていたら、社内で、相談相手を探してみてください。あなたの抱える不安を、あなたがみつけた社内の相談相手に話してみてはいかがでしょうか?もしかしたら、その相談相手は、打てば響く人材かもしれません。まずは、あなたの悩みを誰かと共有してみることから、改善の1 歩を踏み出してみてはいかがでしょうか?